西陣産業創造會館

旧京都中央電話局西陣分局舎は1921年に竣工した岩元禄による近代建築の代表的な建物の一つである.その立面に施された裸婦のトルソーや軒裏のレリーフ等の芸術的価値は既に広く認められ,2006年に内装を除く範囲が国の重要文化財に指定されている.

2015年にNTTグループのオフィスとして使用されていた2階,3階が空室となったことから,2003年以来京都府とNTT西日本の協力の元、NPO法人京都西陣町家スタジオによって運営されていた1階のインキュベーションスペースを2016年から2,3階にも拡張.新たに「西陣産業創造會舘」として生まれ変わることとなった.

活用・補強のための調査の過程で,既設天井内の木組や,通信設備のための二重床下の空間など,この建物が1920年代前半に設計された電話局特有の空間のポテンシャルを持っていることが分かった.また,設計に先だって700枚近あった過去の改修図面や旧土地台帳など,さまざまな資料によって歴史を紐解き,混構造形式の意味(手動交換員の生活空間=木造,通信の生産空間=鉄筋コンクリート造)を明らかにした.

竣工当初は,通信機械室等の通信用途の範囲が鉄筋コンクリート,手動交換員のための宿直室や休憩室,食堂は木造という混構造3階建ての逓信建築だったが,その後自動交換機が導入されるようになると手動交換員の生活空間が不要となり大部分の木造部分が撤去され,現存する木造部分は3階のみとなった.また電話交換が手動交換から自動交換へと移行する中で,各部屋の用途も電話交換室から事務室へ模様替えを行い,変貌を遂げてきた歴史がある.電話交換技術の発展と共に実施してきた模様替えや改修にはひとつひとつ意味があり,今回はそれらに敬意を払い,過去の痕跡を残しながら電話局の歴史の重層性を表出させる改修を行った.大正期の貴重な逓信建築を,次世代に継承する一助となればと考えている.